贈与とは、当事者の一方(贈与者)が相手方(受贈者)に対し、無償で財産を与える契約です。
親子間、夫婦間、親族間、お隣同士等で行なわれることが多く、特段の対価を当事者(特に贈与者側)が希望しない場合に、財産権を移転する方法として、最も手っ取り早い方法といえます。例えば、「現在居住している夫名義の土地・建物のうち、10分の1を妻の名義にしたい。」と希望する場合、10分の1を妻の名義に変更する手段として、贈与が選択肢の1つとしてあげられるでしょう。
不動産を贈与する場合、登記名義人を贈与者から受贈者に変更するための所有権等の移転登記手続きが必要となり、また、不動産に限らず財産を贈与する場合は、贈与税について、基礎控除(年110万円)や夫婦間の居住用不動産等の配偶者控除の適用可否等、煩雑な手続・慎重な判断が伴いますので、司法書士、税理士、税務署等に、事前にご相談されることをお勧めします。
財産分与とは、結婚中に形成した夫婦共同財産を清算して分けることです。
夫婦は、共同生活をしている間、協力して一定の財産を形成します。その多くは夫名義の財産とされますが、そのようにして築かれた財産は、たとえ夫名義であっても、実質上、妻の協力貢献によって形成維持されたものについては、潜在的に夫婦共有財産と考えられます。
このような夫婦共有財産を、離婚の際に、貢献の割合に応じて清算することを財産分与と呼びます。
離婚が成立し、財産分与で不動産を取得した場合、財産分与による所有権等の移転登記が必要になります。財産分与の登記を怠ると、例えば、前の夫がその不動産を他人に売却し、買主が先に登記をしたような場合、先に財産分与を受けていたとしても、その買主が先に登記をしてしまうと、その不動産を取得することができなくなってしまいます。このようなリスクを避けるためにも、財産分与による所有権等の移転登記は必ず速やかに行なわなければなりません。(理屈は、売買の場合とほぼ同じですので、詳しくは売買・融資に関する不動産登記の本質①売買による所有権移転等の登記をご覧ください。)
また、住宅ローンの抵当権等が設定された不動産を財産分与する場合は、夫婦間だけではなく、残債務の返済等に関して、借入先金融機関(銀行・信用金庫等)も関係者となってきます。債務者(借入人)を夫から妻に変更するため、債務引受による抵当権の債務者の変更等の手続きが必要になることが一般的でしょう。
その他、不動産登記に係る登録免許税、不動産取得税、不動産譲渡所得税等の各種税金がかかり、財産が過大である場合は、贈与税が課税される可能性もあります。